エレガント経営学

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米国公認会計士専門スクールの倒産

米国公認会計士資格取得スクール運営
株式会社ANJOインターナショナル
事後処理を弁護士に一任
負債10億5000万円

TDB企業コード:986735060

(株)ANJOインターナショナル(資本金1億円、東京都新宿区西新宿1-20-3、代表齋木修次氏、従業員30人)は、5月16日付で事後処理を佐藤和利弁護士(東京都新宿区西新宿3-2-9、電話03-3348-5158)ほか1名に一任した。

現在、M&Aならびに事業譲渡を検討中であるが、今後の推移次第では自己破産申請の可能性もある。

当社は、1995年(平成7年)2月、資格取得講座の開催、企業コンサルティングなどを目的に設立。米国公認会計士(U・S・CPA)資格取得のための講座のほか、英文簿記、英文会計、米国証券アナリスト、米国公認内部監査人(CIA)、国際会計検定(BATIC)、英文会計などの資格取得のための講座を実施。また、資格取得者・卒業生を企業に派遣する人材派遣、人材紹介業務なども行っていた。

96年2月の大阪校開設を皮切りに、名古屋、横浜、福岡、札幌、仙台、広島、京都、神戸などにスクールを順次開設し、2000年12月期には年収入高約20億1700万円を計上していた。最近では、既存の国際会計・税務関連の資格講座に加え、簿記検定、税理士、公認会計士、証券アナリスト志望者のための国内資格取得支援講座も開始するなど相応の知名度を有し、株式上場を目指していた。

しかし、その後は米国公認会計士試験の制度変更により受験者数が減少したうえ、国の教育訓練給付制度の助成額変更などから売り上げが激減。2005年同期の年収入高は約10億円にまで落ち込み、約4億7000万円の最終赤字となっていた。

この間、各地に開設した教室を順次閉鎖するほか、不動産売却などの経営改善策で立て直しに努めていたが、過去数年にわたる新規事業の失敗や不採算講座による損失もあり、2005年10月以降は資金繰りが急速にひっ迫していた。

このため、今年に入りM&A会社を通じて事業譲渡を打診し、人材事業およびCIA教育部門については売却先が見つかったものの、正式な譲渡には至らず、ここにきて資金繰りが悪化していた。

負債は2006年4月末時点で約10億5000万円。

『2006年5月19日 帝国データバンク 倒産情報抜粋』


【解説】

『日経ベンチャー』では、この倒産を受けて、ANJOインターナショナルの創業者で元代表の安生氏を

「起業家」では成功したが、「経営者」にはなれなかった

と解説していました。

そもそも、米国公認会計士の需要は、外資系企業の日本法人の財務・経理担当者や、国内企業でも国際会計基準を採用しているグローバル企業の財務・経理担当者に限られています。

このような外資系企業、グローバル企業の本社は、ほぼ東京に集中しています。

ですから、地方にスクールを展開しても、生徒が集まらないのは、予測できたはずです。

さらに、ANJOは優れた通信コースもありましたので、地方の人や、通学できない人は、通信コースを利用できていました。地方の各拠点に立派なビルを借りる必要はなかったのです。

また、米国公認会計士の講座だけでなく、他の会計系資格の講座も次々始めましたが、米国公認会計士以外の講座は、どれも内容はお粗末だったそうです。

会計のスクールが倒産するというのは、皮肉ではありますが、なんとなく予測できていたものだと思います。